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スマイリーキクチ氏が語る「今後のネット社会を揺るがす事件」

2017年07月26日

※今回は、ネット風評被害に遭った経験をもつタレントのスマイリーキクチ氏にご寄稿いただきました。

今後のネット社会を揺るがす事件_YI

先日、ある俳優の方がインターネットのブログで「違法薬物を使用している」「海外で児童買春をして、少女に暴行を加えている」などと、全くのデタラメを書き込まれてしまいました。何の確証もないデマは拡散し続け、瞬く間に悪評がネット上に広まり、中にはあたかも事実であるかのような卑劣な書き込みまでありました。
時が経っても事実無根の書き込みは収まらず、7月に誹謗中傷を書き込みしていた男女3人が偽計業務妨害の疑いで書類送検されました。3人は警察の取り調べで「広告収入目的でやった」と供述しているそうです。

最近は簡単に稼ぐ目的で、このような中傷が増えています。
興味を引く内容にしなければブログを見ることはない。開設したブログの閲覧数を集めることで貼り付けた広告収入が得られる仕組みです。サイトの運営会社に広告のバナーを申請して、簡単な審査をすれば広告収入を得ることができます。
サイトの運営会社はブログの内容については特に関知はしないので、被害に遭っている側が書き込みや画像の削除を要請してもなかなか応じてはくれません。

ネット社会の法改正

このような被害を防ぐのであれば、法律の改正をするしかありません。
例えば、居酒屋でお酒を飲んだ後に車を運転をした場合、飲酒運転の当事者だけではなく、酒を提供した店側も処罰の対象になります。それと同様に情報を発信する場所を与えたサイト運営会社にも責任が問われるような法の改正にすれば、運営側も監視の目を厳しくすると思います。が、現実にはそう簡単にはいきません。なぜなら日本は先進国の中でもネットに関する法整備が遅れているからです。

これだけ情報があふれるネットの世界で、みんなの注目を集めるような記事なんてなかなかありません。
人の目を向けさせる内容は悪口だったり、悪質なデマもあります。他にはリベンジポルノや児童ポルノも含まれるので人権侵害は増加する一方なんです。ここに法の整備が追いつかない、やり放題の日本のネット社会の現状があります。

スマイリーキクチ氏の実体験

実は以前、今回の事件と同じような経験をしたことがあります。
2009年にある人物が開設したブログで僕の名前と顔写真、プロフィールを記載して、その記事の下に実際に起きた残忍な殺人事件の関係者だと虚偽の書き込みをされました。ブログの記事には殺人犯というデマが書き込まれている掲示板のURLなども添付されていました。そのブログにはいくつものバナー広告が貼り付けられて、他の記事もネットのデマやゴシップ記事が書き込まれていました。
これは名誉毀損罪に該当するということで、捜査をしてくださった刑事さんが発信元を突き止めると、池袋駅の近くにあるイベント会社内のパソコンから投稿されたものだと判明しました。刑事さんが会社を経営している人物に連絡をして、経緯を説明した直後に経営者は行方をくらましたので真相は分かりません。僕が知っているのはイベント会社の名前と経営者の名前だけです。

稼ぐことが目的の中傷事件

このような広告収入目当ての中傷は以前からありました。
2011年に札幌市で女性2人が暴行目的で襲われて、1人の命が奪われる殺傷事件が発生して容疑者が逮捕されました。が、その直後、全く関係のない人がこの事件に巻き込まれたのです。インターネット掲示板に「容疑者は(実在する不動産会社名)の息子だ」と根も葉もないデマを書き込まれてしまいました。

その理由は容疑者と名字と職業が偶然にも一緒というだけ。たったそれだけの理由で全く関係のない人が容疑者の親族だと事実無根の誹謗中傷の被害に遭いました。不動産業を営む経営者はネット上に会社の名前や住所、電話番号まで書き込まれて仕事を妨害されました。インターネット掲示板には不動産会社を中傷する記載も増え、身元不明の人物が開設したブログにも同様の誹謗中傷が書き込まれました。その不動産会社には取引先からの問い合わせや、ネットのデマを真に受けた者からの嫌がらせや抗議の電話が鳴り響いたそうです。

電話線を切れば仕事に影響を及ぼす、家やマンションなどの賃貸業は地元密着ですから、地域に根付いた仕事です。あらぬウワサが広がれば、仕事に支障をきたすのは間違いありません。デマを信じた者が会社を覗き込んだり、無断で会社の写真を撮り、ネットに晒す者もいたそうです。事実無根だと否定をするために近所に配るチラシを作成したり、地元紙に広告を出したり、200万円以上の経費と時間を費やしました。

当時はネットの誹謗中傷もまだ目新しいものだったので、この事件はニュースや新聞でも取り上げられました。報道番組で被害に遭われた不動産経営者の方がインタビューに答えられていたのを今でも覚えています。
不動産会社にかかってきた嫌がらせの電話を聞くと、声の持ち主は女性でした。一方的に罵倒して、その間に経営者の方が何度も「その情報は全部デタラメで、殺人事件の家族でもない」と説明しているにも関わらず、女はヒステリックな声で「ネットに書いてあるんだよ」の一点張り、もう埒があかないような状態でした。

警察が捜査をしてブログに殺人事件の容疑者とは無関係の会社を「実家」とする虚偽の書き込みをしたとして、静岡県の男性が信用毀損の容疑で書類送検されました。誹謗中傷を繰り返していた男は約1000のブログを開設して、ブログに掲載しているネットのバナー広告からネットショッピングや換金に使えるポイントを増やし、毎月10万~20万円相当のポイントを得ていました。

誹謗中傷が副業になる時代

警察の取り調べでは「ブログへのアクセス数を増やし、ポイントを多く得たかった。社会的に注目を集めた事件で、話題になると思った」と供述したそうです。男の職業は静岡県の小学校の臨時講師でした。「クビになっても食べられる」と供述していました。教育者でもある男が誹謗中傷を副業にしていたのです。

人は悪い評価を信じる傾向にあります
例えば、レストランを選ぶ時にネットで検索して、「すごく美味しい」「清潔でオシャレなお店」などの高評価ばかりが目立つと、サクラが書き込んだように感じる人が多い。逆に「店員の態度が悪い」「値段が高くてマズイ」など悪い評価ばかりがあると、そちらを信じる。人の不幸は蜜の味、注目を集めるなら悪口の方が人の目を引きます。俳優の方を誹謗中傷して書類送検された事件の結末は僕の勝手な憶測でしか過ぎませんが、多分、不起訴処分が下されるでしょう。それか略式起訴で罰金刑かもしれません。容疑者が裁判で人目に晒されながら証言台に立つことはないと思います。犯罪としての罪の重さで考えれば軽いかもしれません。しかし今後のネット社会を揺るがす大きな事件です。これから先、ネットで誹謗中傷することで広告収入を得ようとする人が増えてしまうのではと危惧しています。

今はたくさんの人がインターネットから情報を求める時代になりました。2011年と2017年とでは明らかにネットにおける環境は変貌を遂げました。スマホの普及やSNSで情報も広がりやすい社会です。誹謗中傷によりお金が得られる世界になっている。いつ自分が被害者に遭うかわかりません。また被害者ではなく、加害者の側という見方も考えられます。

例えば同じ会社の従業員が誹謗中傷をブログなどに書き込み、広告収入を副業にしていたら?警察が容疑者の名前を公表したり、本人がFacebookなどのSNSをやっていれば住んでいる地域や会社名が第三者によって特定されます。会社がネガティヴな書き込みをされたりすることも現在のネット社会であれば予測できます。たった1人の過ちで今まで築き上げた信用を失うかもしれないんです。企業側は従業員を雇用する際には従業員向けのソーシャルメディアポリシーを作成しておくべきです。また年に数回でも従業員の教育や研修を行うことで意識を高められることも出来ると思います。

スマイリーキクチ氏のTwitterはこちらをご覧ください。
https://twitter.com/smiley_kikuchi

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日本におけるSNSの利用率はここ数年増加の一途をたどり、2015年3月の調査では実に77%に至りました。企業もこれに比例してSNSをマーケティングに活用しようという動きが高まり、今日では既に一般的なこととなっています。ソーシャルメディアマーケティングは、話題の拡散、属性によるターゲティングや双方向のコミュニケーションといったマーケティングの多様性を生み出し、この成否が顧客エンゲージメントの獲得を左右するようになりました。

しかし、その一方で、ネット炎上件数もまた年々増加し、昨年は遂に1,000件を超え、企業としては、炎上させないSNSコミュニケーション術や、万が一炎上の火種が生じた際にどのように対応するかというリスク管理体制の整備が求められています。これは、ソーシャルメディアの活用を控えるという意味ではなく、ソーシャルメディアを有効に活用するための手段でもあります。

デジタルリスク総研は、2007年からソーシャルリスクマネジメントに着目し事業を行っている株式会社エルテスによって、ソーシャルリスク総研として、2016年2月に設立され、ソーシャルリスクを低減させることを目的とした研究機関として、ネット炎上等のソーシャルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元してまいりました。そして、2016年11月にデジタルリスク総研と改称し、ソーシャルリスク分野に加えて、企業内部の不正や金融犯罪の検知をはじめとしたリスクインテリジェンス分野における研究を開始しました。このサイト上では、企業に役立つ実践的なデジタルリスクマネジメントについて、定期的に情報発信を行いますので、企業等のデジタルリスクマネジメントに是非ご活用ください。

※ 13歳以上の男女。(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

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