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スマイリーキクチ氏が語る
「ネットへの投稿で社会的地位を失う事件」

2017年09月19日

※今回は、ネット風評被害に遭った経験をもつタレントのスマイリーキクチ氏にご寄稿いただきました。

ネットへの投稿で社会的地位を失う事件

アメリカにはウェブサイトを通じて台頭してきた白人至上主義を掲げる「オルタナ右翼」と呼ばれる人たちが存在します。日本でも同じような現象が起きて、「ネット」と「右翼」の言葉を繋ぎ合わせた「ネトウヨ」という俗語で呼ばれています。

唐突にこの話しをするには理由があります。


ネット上で本人特定されるリスク

先月、アメリカのバージニア州で極右集団の集会に反対派との衝突がネットニュースで取り上げられました。Twitterでは英語で「オルタナ右翼を暴け」にハッシュタグがつけられて、デモに参加した人物の顔写真がSNSで拡散されました。その集団の一人がアーカンソー大学の男性教授だと特定されて、ウェブサイト上で吊るし上げに遭い、言葉の集団リンチを受けました。個人だけに留まらず勤務先の大学にも教授の解雇を求める抗議が殺到したそうです。 しかし、実際は顔が似ているというだけの人違い、全くの別人だったのです。何者かが勝手な憶測で裏付けも取らずに断定する。その誤った情報はSNSを通じて瞬く間に拡散されて手に負えない状況になってしまいます。

ネットのデマなんて大したことではないように感じる人もいるでしょうが、疑いをかけられた人はたまったものではありません。ある日突然、ウェブサイトの中に別人格の自分が存在して、それが悪者だとしたら明らかな風評被害につながる可能性があります。 名指しで非難された大学教授は集会が起きた日に2000キロも離れた別の場所にいました。自身のTwitterで何度も事実無根だと否定をし、アリバイの証拠写真まで公開しました。が、一方的に疑いを持つ人は何を訴えても、邪推するかのように隠ぺい工作と捉えられて、バッシングが過激化したそうです。

今やネット死刑や晒し行為は世界共通のアクトになり、一部のネットユーザーの中では社会的制裁や吊るし上げを良しとする傾向があります。言葉や文化が違えども、正義を盾に取った言葉の暴力をする人は情報リテラシーも類似している傾向があります。

上記の大学教授の件は濡れ衣でしたが、事実が一致したという例も過去にはありました。

白人至上主義の集会に参加した男性の顔写真がSNSで拡散されて、実際に氏名や職業などの個人情報が特定されました。そして勤務していたホットドッグ店を解雇されたそうです。過去にはロンドンオリンピックでギリシャの陸上選手がTwitterに人種差別をつぶやき、厳しい批判を浴びました。本人がツイートの削除と謝罪をしても収拾がつかず、陸上競技直前に出場を辞退させられました。それだけでは済まず、その選手はギリシャの陸上競技会からも除名されてしまったのです。国を代表し注目を集めた名選手でも、言葉の代償は人生を激変させることがあります。

悪影響は自分だけの問題ではない

前置きが長くなって申し訳ありません、ここからが本題です。

いま現在、あらゆる国で人種差別問題が広がりつつあります。日本でもSNSに人種差別的な書き込みがされたり、ヘイトスピーチのデモが行われています。そのデモを見かけた時、参加している人たちは帽子をかぶり、サングラスやマスクといった身なりで、あまり顔を出さないようにしている人が多かったのです。もし、ヘイトスピーチに参加している人の名前や勤務先がネットで特定されたらどうなるでしょうか。

例えば、その人が名のある大企業に勤めていたとします、そうなると個人だけの問題では済まないように思います。会社とは関係なく個人の思想や行動であっても、世の中には連帯責任のように企業全体として受け取る人がいるかもしれません。過去に人種差別をネットに書き込んでいた人物の素性が特定されて、勤務先まで批判が及んだ事例もあるので、企業が批判にさらされることも予測できます。しかし企業側も社員個人の価値観や思想を規制することはできないので、問題が発生をいち早く察知して、対処法の下準備をしておく必要があると思います。

本音をウェブサイトに書き込むリスクと問題

数年前に東北の議員の男性が自身のブログで通院している病院の対応を批判しました。議員としての自覚のなさと上から目線の内容と捉えられたせいで、批判はブーメランとなり議員に直撃しました。ブログを更新してすぐにネット上では騒ぎになり、メディアでも散々叩かれました。議員はつい感情が高ぶってブログで怒りをぶち撒けた、それがどれだけの悲劇になるか本人も予期できなかった。議員がブログを更新したのが6月5日、ネットで炎上して6月7日にブログで謝罪、9日にブログを閉鎖、17日に記者会見で議員が謝罪、25日に責任の重さに耐えきれず自らの命を断ってしまったのです。その後も自業自得だとネット上で非難が続きました。中傷や追い詰め行為に加担した人たちからの反省や謝罪はありません。やる側は罪悪感ではなく達成感に近い感覚だったように感じました。誰もが自由に情報を公開できる昨今、被害者にも加害者にもなってしまいます。だからこそ、この事例を風化させてはいけないと思いました。

言葉ひとつで職や信用だけでなく、社会的地位まで失う世の中です。自分一人だけの問題では済まず連帯責任が問われるかもしれません。人の価値観は十人十色ですから共感の裏には反感もあります。特定の人だけが閲覧するのではなく公共の場であることを意識しましょう。

ネットに書き込むリスク

ある大手転職サイトの口コミ欄に「社長はワンマン」「管理職に管理能力はない」などと書き込みがされて、書かれた企業がプロバイダに対し、投稿者の個人情報の開示を求める民事裁判が行われました。そして先月、投稿者の名前や住所の開示を認める判決が下されたのです。その内容が誹謗中傷なのか真実かは互いの言い分もあるので分かりませんが、情報発信者の開示が認められたことに驚きました。ひと昔なら発信者の開示は認めてもらえなかったでしょう、認める判決だから報道されたのですが。

転職を考えている人たちは専用サイトを利用して情報収集をするのが当たり前の時代です。サイトの口コミには正誤に関係なく、あらゆる情報が掲示されるので、ブラック企業などと書き込まれてしまうと優秀な人材が離れるだけでなく、悪評の書き込みが増えれば企業にとってはネガティヴなイメージしか残らない場合がほとんどです。企業側はイタチごっこを懸念して悪評価の削除ではなく、情報発信者の開示を選択したかもしれません。

企業にとって悪評がネットに書き込まれると、イメージの悪化から風評被害に遭い会社が潰れることがあります。悪評の書き込みをした人物の真意は分かりませんが、匿名で書き込めば身元は特定されないと勘違いをしたのでしょう。

「みんなも書いているから自分も大丈夫」。

その過信が悲劇の引き金になることに気づいていない人が多いと言えます。

トラブルを起こさなかったとしてもスパム送信の不正プラグインなどのウィルス感染や不正アクセスにより、第三者にスマホが乗っ取られるケースもあります。クレジットカードを悪用されたり、保存した画像も他人に覗き見される。SNSを利用していれば普段どのようなことを投稿しているのかもバレてしまう。実際に問題が発生すれば身元は特定されます。匿名だからと勘違いして好き勝手に書き込めむと身を滅ぼす結果になるでしょう。

SNSは情報だけでなく感情も共有できます。嫌いな人がSNSを開設していれば相手に向かって直接文句が書けるので、日頃のストレスのはけ口として利用している人もいます。意外かもしれませんが年齢層が高い人が多いのです。 20代より上の世代は情報リテラシーを学ぶこともなく、パソコンやスマートフォンを手に入れました。ある意味ではちょっと厄介な世代かもしれません、それは自分でも感じます。


企業側も従業員を雇用する際、社内におけるネットワークの利用規約を整備する必要性があります。若年層だけでなく多くの人がSNSをコミュニケーションの手段として利用しています。内部情報の流出も問題視されているので、契約書内には社内情報の守秘はもちろん、社員やパート従業員、アルバイトの情報リテラシーの研修を定期的に実施することで意識が向上すると思います。

スマイリーキクチ氏のTwitterはこちらをご覧ください。
https://twitter.com/smiley_kikuchi

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デジタルリスク総研について

日本におけるSNSの利用率はここ数年増加の一途をたどり、2015年3月の調査では実に77%に至りました。企業もこれに比例してSNSをマーケティングに活用しようという動きが高まり、今日では既に一般的なこととなっています。ソーシャルメディアマーケティングは、話題の拡散、属性によるターゲティングや双方向のコミュニケーションといったマーケティングの多様性を生み出し、この成否が顧客エンゲージメントの獲得を左右するようになりました。

しかし、その一方で、ネット炎上件数もまた年々増加し、昨年は遂に1,000件を超え、企業としては、炎上させないSNSコミュニケーション術や、万が一炎上の火種が生じた際にどのように対応するかというリスク管理体制の整備が求められています。これは、ソーシャルメディアの活用を控えるという意味ではなく、ソーシャルメディアを有効に活用するための手段でもあります。

デジタルリスク総研は、2007年からソーシャルリスクマネジメントに着目し事業を行っている株式会社エルテスによって、ソーシャルリスク総研として、2016年2月に設立され、ソーシャルリスクを低減させることを目的とした研究機関として、ネット炎上等のソーシャルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元してまいりました。そして、2016年11月にデジタルリスク総研と改称し、ソーシャルリスク分野に加えて、企業内部の不正や金融犯罪の検知をはじめとしたリスクインテリジェンス分野における研究を開始しました。このサイト上では、企業に役立つ実践的なデジタルリスクマネジメントについて、定期的に情報発信を行いますので、企業等のデジタルリスクマネジメントに是非ご活用ください。

※ 13歳以上の男女。(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

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