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【年末の風物詩再び‼】
今日売れ残ったクリスマスケーキはどうする?

2014年12月25日

今日はクリスマスです。特にクリスマスの週は、あちこちのコンビニやデパートの軒先でサンタクロースとトナカイのコスプレをした販売員の方たちが元気にクリスマスケーキを売っていて、この時期の風物詩とも言えますね。

しかし、今日売れなかったケーキはどうするのでしょうか?
季節感満載のクリスマスケーキをお正月に食べる方はいらっしゃらないですよね。
昨年は郵便局員の年賀はがきの「自爆営業」が話題となりましたが、やはり季節感がある商品は在庫にはできないので、未だにこうした行為は続いている様です。

今回は自爆営業の実態とその対策を考えてみます。

発覚している自爆営業は氷山の一角?

〝自爆営業(じばくえいぎょう)とは企業の営業において行われている社員の負担。商品を販売するという営業職に就いている社員が、その商品が売れない場合には自腹でその商品の購入することでノルマを達成するということ。”(出典:Wikipedia

とあります。
「自爆営業」がクローズアップされたのは、年賀はがきが有名です。
例えば…

11月のとある日
上司A
「これ一人当たり10,000枚売って来いよ」
営業マンB、C
「はい。わかりました!!行ってきます!」



営業マンB
「こんなに売れるわけないじゃん。」
営業マンC
「毎年毎年ノルマ高すぎでしょ。」
営業マンB
「今年も金券ショップで換金かー。」
営業マンC
「最近、年賀状送らない人多いから買取率低いところ多いんだよなー。」
営業マンB
「そもそもノルマの設定おかしいよね。これ返品したらどうなるのかな。」
営業マンC
「いや、それ会社にいれなくなるでしょ。」
営業マンB
「だよね。断りたいのに断れないのって、強要と変わらないね。」
営業マンC
「はぁー。」

こんなやり取りが行われているかもしれません。
年賀はがきだけではなく、保険業界や旅行業界でも状態化している問題として、たびたび指摘されています。
多くの方は、「お年賀」「恵方巻」「暑中見舞い」「お歳暮」「クリスマス」といったキーワードを聞くと「もうそんな時期か」といった感想を抱くかと思います。

しかし、販売されている方の立場からすると、「また今年も来たか」となってしまうわけです。

では、こうした行為に法的な問題は無いのでしょうか。
労働基準法24条1項では、

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」

と定められています。
学生時代に勉強したことを思い出すかもしれませんが、賃金支払5原則の内、「通貨払いの原則」における「現物給与の禁止」に抵触しているかが法的な争点となります。
つまり、実際に自分で欲しいと思わないモノやサービスを、自身の給与の中から買い取ることによって現物支給を受けているのと同様とみなされ、違反になる可能性があります。

欲しくない自社の商品やサービスを強要されて購入した場合は、その分の給与の返還及び賠償請求を行うことが可能です。

しかし、現在働いている会社の売上や自身のノルマが将来的に自分の昇進や給与に係ってくるとしたら、どうでしょう。

少し位我慢して買い取ってしまうかもしれませんね。

ここが一番難しいところです。

「強要」が立証しにくいのです。

これまでにもこうしたグレーな事実が横行されていた会社も多く、結局は自身が勤める会社のためにはしょうがないことだと割り切っていたようです。

実態把握が困難だからこそ必要な情報収集

さて、翻って会社のお偉い方たちはこうした「自爆営業」の実態を把握しているのでしょうか。

組織的に「自社のために!」と行動している一連の「自爆営業」に関して、社内通報制度を活用して社内のお偉いさんに実態を暴露する社員がいるなんて想像つかないですよね。

そうなのです。

これまではこうした情報は言わずもがなの組織内での暗黙のルールなのです。

しかし、最近ではこうした情報がいとも簡単にTwitterやFacebook、2ch等の掲示板に情報発信されてしまうことで、表沙汰になり、社会問題化してしまっています。
そのため、最近では内部情報の暴露に伴う企業への批判が絶えません。

一度現実社会でたたかれてしまうとその企業の信用や評判を回復することは容易ではありません。

では、こうした現状に企業はどうやって対処していくべきなのでしょうか。
課題解決へのポイントは、

こうした情報を経営幹部がどのように把握するか

です。

勿論、経営幹部が認識しているのであれば、「自爆営業」をしないでも売上を上げていく仕組みを考えることが課題となりますが、よくあるケースとして、

① 経営幹部は認識していないが、その下の管理職レイヤーでは現状を認識していて情報をあえて上に報告しないケース。

② 経営幹部もその下の管理職レイヤーも認識していないが、現場スタッフは全員認識しているケース。

上記の2点が挙げられます。

毎年多くの「自爆営業」が行われ続けていくことで次年度の売上計画もその数字を織り込んだ計画になってしまいます。
そのため、いつまでたっても「自爆営業」の呪縛から解けなくなってしまうのです。

ではどうするか。

上述した通り、各現場の営業は自身の将来のためにこうした実態を社内の通報制度を用いて告発するようなことはしません。

そこで、はけ口として、気軽に情報発信ができるSNSや匿名性のあるネット掲示板を活用する傾向があります。

そのため、こうした事態にはインターネット上に散らばっている「声」を拾うことで実態の把握ができるようになる可能性があります。

報告が上がってこない現場の「声」を拾うことで、現実社会でクライシスに発展しない様に事前に対応を行うことも、現代的な企業経営には不可欠なマネジメントの一つとなってきていると言えます。

売れ残ったクリスマスケーキは買うべきなのか

12月25日も21時を過ぎると、クリスマスケーキ売り場の販売員の方たちは声を嗄らして一生懸命にケーキを売っています。売れ残ったら自分達で買い取らなくてはいけないからですね。

最近ではこうした環境で働くアルバイトのことは「ブラックバイト」なんて呼ばれています。ケーキが大好きな学生が自腹で安く買い取れるのであれば一石二鳥かもしれませんが、そうでもない方であれば気の毒ですよね。

では今夜、12月25日の夜に通りかかった店先でケーキが売れ残っていた場合、私たちはそうした境遇に同情して特別買う予定もないケーキを買ってあげるべきなのでしょうか。

① 同情して買ってあげる。
⇒「自爆営業」は回避される。
⇒でも売上はしっかり上がる。
⇒来年も同様(もしくはそれよりも少し上)の売上計画を立てる。
⇒結局来年も「自爆営業」のリスクは残ったまま。

② 「自爆営業」の無い社会のため買わない。
⇒販売員の方たちが「自爆営業」で買い取る。
⇒会社は今年の売上計画も予定通りと考える。
⇒来年も同様(もしくはそれよりも少し上)の売上計画を立てる。
⇒結局来年も「自爆営業」が行われる。

どちらにして「自爆営業」のジレンマからは逃れられないようです。

みなさん。

根本解決への道のりは遠く険しいようです。

エルテスクラウド