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「忘れられる権利」でほんとうに忘れてもらえるのか

2015年04月15日

2014年5月、スペインのマリオ・コステハ・ゴンザレスさんがGoogleに対して自身の過去の債務記録へのリンクを削除するよう求めていた裁判で欧州連合司法裁判所(EUの最高裁にあたる)は「忘れられる権利」があると判断し、Googleにリンク削除を命じる判決を下しました。
CNN.co.jpより
今回は、今後日本でも議論になると思われる「忘れられる権利」について考えてみたいと思います。

忘れられる権利とは

「忘れられる権利(=rights to be forgotten)」とは、2012年にEUで提案された「一般データ保護規則案」の17条に記載された権利で、個人データを公開しているような管理者に対し、データ主体の請求があった場合、当該データへのリンクや当該データのコピーを消去するように義務付けたものです。その後、議決される際には、”right to erase”(削除するための権利)と権利の名称が改められましたが、日本では規則案段階の名称の和訳である「忘れられる権利」として定着しているので、本稿でも「忘れられる権利」と呼ぶことにします。

この忘れられる権利とは、要するに個人の過去の黒歴史が検索結果に出てくる場合、Googleなどの検索エンジン(判決でデータ管理者としてみなされた)は、求めに応じてリンクの削除(=検索結果にデータが記載されているページを表示させない)をしなければなりません。とはいっても、請求すれば無条件に削除されるわけではなく、「検索を通じて情報を得るという一般市民の利益の優越を基礎づける特段の事情が見当たらない本件においては」という前提付きで、冒頭の判決もなされています。

日本ではどうなっているか

日本では、現状では「忘れられる権利」に対応する明文化された権利はなく、プライバシー権や人格権の侵害を根拠にWeb上の記載の削除を求めることになります。欧州ではGoogle集団訴訟(イギリスにおける広告のWeb履歴追跡問題に関する裁判)もあり、今後さらにインターネットと個人情報(プライバシー)の問題は注目を集めて判例もつみあがっていくとみられています。忘れられる権利と、「知る権利」や「報道の自由」とのバランスをどこでとっていくのか、日本では結論はまだ出ていませんが、欧州に引っ張られる形で議論が進んでいくことが期待されます。

「忘れられる権利」で忘れてもらえるのか

さて、日本でも欧州のように忘れられる権利が認められた場合どうなるでしょうか。個人に関するインターネット上にある情報を消したい、というケースは今後増えていくでしょう。スペインのケースのように過去の債務に関する情報以外でも、逮捕歴・過去の写真・自分に関する悪い噂や評判など、当社(エルテス)でも個人からのそのようなご相談は増えています。
裁判で勝訴することで、リンク削除には成功したとしても、インターネット上にある、忘れてほしい情報の「影響力」を無くすことはできるのか―2つの理由からそれは難しいと思います。
まず1つ目は、裁判で請求が認められた場合、GoogleやYahoo!などで検索をかけた際に表示される”検索結果”には消したいページが表示されなくなりますが、そのWebページ自体を消せるわけではありません。そのため、他のルート(他ページからのリンク等)からその情報にたどり着くことが考えられます。
2つ目は(これが重要!)、「忘れられる権利が認められ、消せました!」という事実が新たにニュースになってしまうということです。わたしもこの記事を書くにあたって、冒頭のゴンザレスさんの裁判についてCNNニュースで情報を得ましたが、もともとはGoogleの検索結果からたどり着きました(!!)。ゴンザレスさんからすると忘れられたい過去が逆に目に触れやすくなってしまっているという、なんとも皮肉な結果となっています。

過渡期だからこその事象かもしれませんが、日本で制度化されどう適用されるのか固まるまでにはまだ少なくとも数年はかかるでしょう。自分のレピュテーション(評判)を改善させたい、という本来の目的に対しては、法律に基づく情報の削除以外にもアプローチ方法はあります。

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