デジタルリスク総研は、デジタルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元することによって、デジタルリスクを低減させることを目的とした研究機関です。MORE

スマイリーキクチ氏が語る「フェイクニュース」

2017年04月05日

※今回は、ネット風評被害に遭った経験をもつタレントのスマイリーキクチ氏にご寄稿いただきました。

shutterstock_583991911

フェイクニュース、この言葉が世間に知られるような時代になった。フェイクニュースの特徴は主にニュースサイトや個人が発信するブログやSNSなど、インターネットから発信されている虚偽の情報だ。 テレビや新聞なら情報が広がるまでに時間がかかるが、SNSなどを利用することで瞬く間にデマが拡散してしまう。

デマというものは産業のひとつで、昔から新聞や雑誌、書籍などにデマを書き、それを生業にしているライターや作家がいる。近年はネットを利用すれば個人で気軽に情報が発信できるので、世間から注目を浴びるようなネタを書き込み、そこに広告を貼り付けることで収益が得られる人もいる。メルマガなどの有料サイトに設定して、「メディアが報道しない真実」や「マスコミが伝えない真相」という大げさな見出しと適当な記事を書き込むだけで済む。それに釣られて閲覧する人はお金を払ってでもデマ情報を信じたがる。お金が欲しければ信じる者を増やせばいい。信者という漢字を足すと、信+者=儲、「儲ける」という漢字に化ける。これがビジネスの仕組みなんだろう。

後を絶たないフェイクニュース

フェイクニュースをメジャーにしたのは昨年のアメリカ大統領選挙だろう。選挙戦の際に様々な情報が飛び交い、真実の何十倍もの捏造された情報が拡散された。 例えば、ローマ法王がトランプ氏の支持を表明。このニュースが大々的に発表されたが完全なフェイクニュースだった。無数にあるフェイクニュースの中で、ネット内で終結せず、生命に関わる事件に発展したケースもあった。 「ワシントンにあるピザ店のコメット・ピンポンでは児童を誘拐し、買春や人身売買などの虐待をしている、この犯罪組織は通称「ピザゲート」と呼ばれて、ヒラリー・クリントン陣営などの政治家が犯罪に関与している」というデマがSNSに流布された。掲示板でも話題になりTwitter上では#pizzagateというハッシュタグまで登場し拡散されたのだ。が、実際はデマや中傷だけでは済まなかった。このデマを信じた男が店内でライフル銃を発砲して、警官との銃撃戦の末、逮捕された。容疑者の男は「ネットに書いてあるピザゲートを自ら確かめるつもりだった」と供述したそうだ。どうやら正義のつもりだったらしい。

デマの被害に遭われたピザ店はニュースの映像を見る限り、アメリカならどこにでもあるようなレストランで、日本でいうところのファミレス的な雰囲気だ。それが表向きは普通のピザレストラン、裏の顔は少女売春や誘拐などの犯罪組織。こんなバカげた情報を真に受ける人が普通に存在するんだ。

この事件は全米のメディアでも大きく取り上げられた。にも関わらず、現在も「ピザゲート」がネット上に拡散されたせいで、デマをデマと認めない者からピザ店に殺害予告などの脅迫が続いているという。僕自身が似たような経験しているせいか、これが風評被害のリアルな実態だと思う。

デマが世界を動かす時代

こんなデマに踊らされるのはアメリカだけで、対岸の火事だと笑ってはいられない。日本でも起こりうる身近な問題のように感じた。それはデマ情報がインターネットを通じて日夜拡散されているからだ。日本版のピザゲート事件だって、いつか起きるかもしれない。

スマホの普及と誰でも気軽に情報が発信できる、情報の正誤性よりスピードが重視される『post-truth』(真実は二の次)というのが、今の風潮だろう。

デマの基本は情報をこじつけて、大げさにすることで真実のように化ける。しかし、歪曲した情報の中に事実を織り交ぜると何が真実かがわからなくなる。デマが世界を動かし、デマが人を導く時代になった気がしてしまう。 ビジネスにおいてもインターネットの存在は無視できない。社会的評価を下げるような情報をネット上に拡散するのは簡単に出来る。今日の情報社会では優良企業がデマによって業績が悪化する場合もあるし、その逆もあり得る。インターネットが持つパワーは侮ってはいけない。現代社会で情報にコントロールされずに生きていくのは難しいと思う。 本人の知らぬ間にネット上に中傷が書き込まれたり、なりすましの被害に遭うかもしれない。デマに踊らされて加害者になる場合だってある。インターネットに潜む危険な側面を忘れないように心がけよう。

スマイリーキクチ氏のTwitterはこちらをご覧ください。

https://twitter.com/smiley_kikuchi

03-6550-9281

お問い合わせ

  • 大阪06-6210-5017
  • 福岡092-287-9732

このページの読者に読まれているコラム

デジタルリスク総研について

日本におけるSNSの利用率はここ数年増加の一途をたどり、2015年3月の調査では実に77%に至りました。企業もこれに比例してSNSをマーケティングに活用しようという動きが高まり、今日では既に一般的なこととなっています。ソーシャルメディアマーケティングは、話題の拡散、属性によるターゲティングや双方向のコミュニケーションといったマーケティングの多様性を生み出し、この成否が顧客エンゲージメントの獲得を左右するようになりました。

しかし、その一方で、ネット炎上件数もまた年々増加し、昨年は遂に1,000件を超え、企業としては、炎上させないSNSコミュニケーション術や、万が一炎上の火種が生じた際にどのように対応するかというリスク管理体制の整備が求められています。これは、ソーシャルメディアの活用を控えるという意味ではなく、ソーシャルメディアを有効に活用するための手段でもあります。

デジタルリスク総研は、2007年からソーシャルリスクマネジメントに着目し事業を行っている株式会社エルテスによって、ソーシャルリスク総研として、2016年2月に設立され、ソーシャルリスクを低減させることを目的とした研究機関として、ネット炎上等のソーシャルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元してまいりました。そして、2016年11月にデジタルリスク総研と改称し、ソーシャルリスク分野に加えて、企業内部の不正や金融犯罪の検知をはじめとしたリスクインテリジェンス分野における研究を開始しました。このサイト上では、企業に役立つ実践的なデジタルリスクマネジメントについて、定期的に情報発信を行いますので、企業等のデジタルリスクマネジメントに是非ご活用ください。

※ 13歳以上の男女。(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

運営者について

デジタルリスク総研は株式会社エルテス内にございます。
株式会社エルテスでは、次のような事業を行っております。お気軽にご相談ください。