デジタルリスク総研は、デジタルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元することによって、デジタルリスクを低減させることを目的とした研究機関です。MORE

スマイリーキクチ氏が語る
「もしあなたが突然、誹謗中傷の被害者になったらどうしますか?」

2017年10月26日

※今回は、ネット風評被害に遭った経験をもつタレントのスマイリーキクチ氏にご寄稿いただきました。

今年の6月に東名高速道路で無謀な煽り運転により、尊い命が奪われました。 警察の地道な捜査によって、容疑者が今月に逮捕されました。しかし、この事件が無関係な人に飛び火したのです。悪質性が高い事件だったので、怒りの矛先を見つけるためかインターネット上では容疑者の晒し行為が始まりました。その結果、事件とは無関係な人が容疑者の父親だという事実無根の情報がネット上に書き込まれるという二次被害が発生しました。

まとめサイトや掲示板サイトなどに、匿名の人々が集団となって何の確証も裏付けもないまま好き勝手に書き込みました。全く別人に仕立て上げられた事実無根の情報はツイッターなどで瞬く間に拡散し、デマが真実のように化けてしまったのです。


なぜ、そのようなデマが発生したのか

実際の容疑者の職業が建設作業員、福岡県に在住、父親も建設関連の仕事という報道がされました。そこで攻撃の的にされたのは容疑者と苗字が同じ、容疑者の自宅から比較的近い距離に職場がある、そして職業が建設業、これに当てはまる人を吊るし上げたのです。 たったこれだけの内容でネット上では“容疑者の父親”だと烙印を押されてしまうのです。

ネットにデマを書き込まれたら・・・

ネットに拡散したデマを真に受けて、無関係な人を憎しみ、名前や住所、電話番号などの個人情報をさらして匿名の集団が言葉のリンチを繰り返す。 容疑者の父親と疑われてしまった方には子どもがいますが、ワイドショーのインタビューでは子どもはまだ中学生だとお話しされていました。しかし、一方的に怨む者に真実は通じません。ネットの掲示板などでは実名とともに「バツイチで若い頃の子どもが、あの煽り運転の男」だと書き込まれてしまう。こんな根も葉もないデタラメが、まるで事実のようにされる。これがネット社会の危険です。

そして、被害はさらに深刻化します。掲示板やSNSに中傷を書き込まれる、その次は仕事への妨害行為です。
実際にグーグルの口コミで社名を検索すると、低評価レビューには「犯罪者家族の巣窟」「きったねえ建物wwwww そりゃあんな化物顔が育つわけだわw」などと悪評が投稿されてしまいました。

そのデマを信じた集団の中には会社に嫌がらせの電話を執拗にかける者もいました。
会社には1日に100件近い無言電話や罵声を浴びせる嫌がらせの電話が鳴り続ける。現実的に考えてみてください。100件近い電話がかかってくれば仕事もはかどらないし、悪評が広がれば顧客も離れてしまいます。
電話口でネットのデマを何度否定しても、相手は罵声を浴びせて聞く耳を持ちません。 素性もわからない人物から脅迫まがいの文句を一方的に浴びせられるのです。突然こんなことをされたら精神的に疲れ果て、仕事だけでなく日常生活にも悪影響を及ぼすでしょう。

デマは否定をすればするほど、疑惑が深まります。“容疑者の父親”だと狂信した集団は「ウソつくな、やってない証拠を出せ」「火のないところに煙は立たない」と勝手に憤慨してしまうのです。

間違った正義感

デマを信じる信じないは本人の自由です。
ただし、特定の人に対して、中傷の書き込みや電話などの嫌がらせ行為をした時点で、やった人物には責任が生じます。
こういうことをする人間は自分の行為が悪いことをしてるなんて自覚もなく、むしろ、良いことをしてるという意識でやっているので対処が難しいです。 もし、中傷や脅迫など嫌がらせ行為をする者が警察に捕まっても、自分の行為を正当化するために、「最初にデマを書いた奴が悪い」「元の煽り運転の事故があったから悪い」と言い訳を並べて、他人に責任を擦り付ける。最終的に、「ネットに騙された、私は被害者なんです」と、、、毎回、このパターンです。

やる側はネットの自警団のつもりですから、嫌がらせも正義感だと思っているんでしょう。無関係な人を犯人扱いしたり、罵倒したりするのは正義ではありません。ただの暴力です。 正義は人を吊るし上げたり、叩くだけでなく、弱い立場の人を守るのも正義だと思います。だいたい正義感のある人は匿名や集団で嫌がらせ行為なんてしませんからね。

悪い奴には何をやってもいい

まず、”悪い奴”が真実なのかウソなのか情報を精査する必要があります。そうしないと”自分が悪い奴”になる危険があります。曖昧な情報で決めつけるリテラシーの低い人が増加しています。
しかも自分の正しさを証明するために他人を攻撃する。タチが悪いんです。

やられた側の人はデマの疑いは晴れても、ネットに書き込まれた悪評は消せません。
凶悪な事件が発生するたびに、ネット上では”犯人の親族”扱いにされたり、地元が近い、年齢が近いだけでも”友人”や”交際相手”にもされます。 いつ自分が誹謗中傷の被害者になるかはわかりません。また、SNSなどを利用している人は加害者になる危険性もあります。 もし、あなたが同様の被害に遭ったとして、自分の勤めている会社や自宅に罵声や脅迫の電話がかかってきたら、どのように対処しますか。 相手を説得する、又は放置しておけばいずれ落ち着くので、それまで耐える。 これらは逆に中傷や嫌がらせなどの被害が広がる恐れがあります。

警察に捜査してもらう?

ネット上の名誉毀損や脅迫は簡単に捜査はしてもらえないのが現状です。
今回のデマの被害に遭われた方も、地元の警察に捜査を懇願したところ、捜査が出来ないと断られたそうです。
インターネット関連の事件で捜査が出来る警察官は、今現在でも各警察署に一人いるか、いないかです。残念ですが、これが現実です。傷害事件のように目に見える被害と中傷や脅迫のネットリンチでは差が生じます。真剣に取り合ってくれる刑事さんは数が圧倒的に少ないです。仕事は休業に追い込まれ、家族はデマの恐怖に怯えているにも関わらず、泣き寝入りになってしまうのです。被害が深刻化しても簡単にいきません。
もし、デマを真に受けた者が実際にあなたや家族、友人に暴力を振るったら警察は動いてくれるでしょうが、やられた側の心情はそれで納得は出来ないです。
個人で掲示板のサイト管理人にデマや中傷の削除要請を地道に行うか、法務省の人権窓口に相談をして、書き込みの削除協力を申し出るか、イタチごっこではありますが、自分でやれる事はできる限りやった方が賢明です。

インターネットの誹謗中傷による風評被害は生半可なものではない

自分はネットの誹謗中傷の被害には遭わないし、勤めている会社も大丈夫、これが理想です。しかし、デマや中傷は突然やってきます。 今のネット社会ではトラブルや危険を回避する方法や、いざという時の対策をシミュレーションしておく必要があると思います。

03-6550-9281

お問い合わせ

  • 大阪06-6210-5017

関連コラム

このページの読者に読まれているコラム

デジタルリスク総研について

日本におけるSNSの利用率はここ数年増加の一途をたどり、2015年3月の調査では実に77%に至りました。企業もこれに比例してSNSをマーケティングに活用しようという動きが高まり、今日では既に一般的なこととなっています。ソーシャルメディアマーケティングは、話題の拡散、属性によるターゲティングや双方向のコミュニケーションといったマーケティングの多様性を生み出し、この成否が顧客エンゲージメントの獲得を左右するようになりました。

しかし、その一方で、ネット炎上件数もまた年々増加し、昨年は遂に1,000件を超え、企業としては、炎上させないSNSコミュニケーション術や、万が一炎上の火種が生じた際にどのように対応するかというリスク管理体制の整備が求められています。これは、ソーシャルメディアの活用を控えるという意味ではなく、ソーシャルメディアを有効に活用するための手段でもあります。

デジタルリスク総研は、2007年からソーシャルリスクマネジメントに着目し事業を行っている株式会社エルテスによって、ソーシャルリスク総研として、2016年2月に設立され、ソーシャルリスクを低減させることを目的とした研究機関として、ネット炎上等のソーシャルリスクに関する研究を行い、その成果を社会に還元してまいりました。そして、2016年11月にデジタルリスク総研と改称し、ソーシャルリスク分野に加えて、企業内部の不正や金融犯罪の検知をはじめとしたリスクインテリジェンス分野における研究を開始しました。このサイト上では、企業に役立つ実践的なデジタルリスクマネジメントについて、定期的に情報発信を行いますので、企業等のデジタルリスクマネジメントに是非ご活用ください。

※ 13歳以上の男女。(出典)総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

運営者について

デジタルリスク総研は株式会社エルテス内にございます。
株式会社エルテスでは、次のような事業を行っております。お気軽にご相談ください。